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長崎地方裁判所 昭和24年(行モ)3号 決定

長崎県北高来郡小長井村大字井崎名六百七十八番地

申請人

森喜平

諫早市諫早税務署内

被申請人

諫早税務署長 妹尾千尋

主文

申請人の本件申請は、これを却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は「被申請人が昭和二十四年六月二十八日別紙目録記載の物件に対し為した強制執行は本案判決のある迄これを停止する」との決定を求め、その申請の理由として、被申請人は申請人が税金を滯納したとの理由で昭和二十四年六月二十八日申請人所有の別紙目録記載物件外十数点の動産を差押えた。然し乍ら右差押物件中別紙目録記載の物件は被申請人の生活上欠くべからざる衣服家具であり、又祭祀上職務上必要な衣服であつて、国税徴収法に所謂差押禁制品であるから、これに対する差押の取消を求める為本案の訴訟を提起したのであるが、右差押物件に対しては本案判決を待たずに競売される虞れがあるので不測の損害を避ける為、本件申請に及んだ旨主張するのである。

そこで審案するのに、本件差押処分は国税徴収法による滯納処分として行われたものであることは申請人の主張自体で明白で該処分に対し異議のある者は先ず政府に対し審査の請求を為すことを要しこれに対する決定を経た後でなければ行政訴訟の提起が許されないものであることは、国税徴収法第三十一条の二乃至同条の四及び行政事件訴訟特例法第二条の明定するところであるから、申請人は先ず適法な期間内に右法律による審査請求の手続を採らねばならない。然るに申請人が右手続に及んだ事跡は全然これを認めることができないばかりでなく、本件記録を精査しても前記特例法第二条但書に所謂審査決定を経る必要のない場合にあたるような正当な事由は、何等これを認めることができない。

果してそうであるとすれば、本件申請は、申請の理由として主張する内容に立入るまでもなく、それ自体が不適法として却下を免れないものというべきで、申請費用の負担については民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用して主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 林善助 裁判官 厚地政信 裁判官 安仁屋賢精)

(別紙目録省略)

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